【くまドフ】
たどたどしく伸ばしてくる長い指をくわえた。たかが薄い布きれ一枚、自分でほどいてしまえばいいのだ。決して人に膝をつくことのないこの男が、自分の言葉に従っている事実に酷く昂ぶっている。それを教えてやるほどおれは親切な人間ではないので、代わりに物言いたげな唇を塞いだ。
【くまドフ短文】
ドフラミンゴ、とその口が呼んだ。温度を失った手、かたい肌、兵器そのものの内臓。街一つをたやすく滅ぼせる存在になった男は、心底困り果てて俯くこがね色の旋毛を見下ろしていた。もうどこにも行かないと言い訳をするように囁くと、かすかな頷きにつれてはたりと雫が地を打った。
【くまドフ】
Trick or treat?と出来損ないのミイラが尋ねてくる。紅茶に添えるビスケット、薄荷飴、差し出せるものを一通り考え却下して、くまはところどころ包帯のゆるんだ体を膝の上に乗せた。白い布と胸の間にくん、と指を差し込み、口の端を上げる。 「悪戯はされる方だろう」
【しねくまドフ】
まどろみながら、体の隅々まであたたまっているのを自覚する。薄く目を開けるとくまがこちらを見ていて、ああ夢かともう一度眠りに落ちた。抱き寄せられた腕が現実だと気付くのは、いつも二度寝から覚めた後だ。それを実感するには、まだ薬指を見てしまうけれど。
【しねくまドフ(くまサイド)】
「せんせ、したい」
教え子だった頃の恋人が呟いた。あかいまなじりとかすかに震える指先が示すのは、欲情ではない。抱きしめてほしいと、そんな簡単なことを言わせてやれなかった己の不甲斐なさを悔いながら、腕にくるんだ。
【しねくまドフ(ドフサイド)】
溜息をつかれた。気分じゃなかったらしい。馬鹿みたいだ。「違うだろう」と本を閉じ、手を伸べられた。意味が解らずにいると、引っ張られてたたらを踏む。全身であの人の上に乗りかかった。あたたかい。目の奥がつきりと痛んで、このまま死にたいと思った。
【しねくまドフアフター】
古ぼけた樫の扉を開けると、途端に暖かな空気に包まれくまは息をついた。カクテルを作るふりで口説いてくる客をやり過ごしていたらしいドフラミンゴが、気付いて目線を上げる。『I'm Here.』と唇だけの密やかな主張に感心した。こちらの暮らしにも馴染んだものだ。
【D兄弟ドフ】
ぎち、と音が立ちそうなほど拡がった粘膜の縁を、指が撫でた。なあおれのも入るかな、尋ねた相手は咥えこんだ本人ではなく、咥えこませた犯人だ。首を振るドフラミンゴを意に介さず青年が笑う。何事も経験だろ?言い終わらぬうちに、硬い肉がぬぐ、と押し入ってきた。
【殉教者←暴君パロ】
黄金、瑠璃、美酒、女、堕落の歓び、侮辱、鞭打ち、打擲、拷問。そのどれにも、お前が後生大事にしている神を、お前から引きずり出すことはできなかった。俺ならばどうだと言う前に死を請われた。ならば。ならば死ぬがいい。お前ほど俺に恥をかかせた男はいない。
【半獣パロ】
傷だらけででかくて物騒な目つきをした奴だった。引きちぎれた首輪はそれだけで駆除の対象だ。力ずくで取ろうとしたのだろう、太い首には縄のような擦過傷が付いていた。それで何故だか気に入って、俺のとこ来いよ、と窓から声を掛けたら睨まれた。ますま飼いたくなった。