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萌えた時に萌えたものを書いたり叫んだりする妄想処。生存確認はついったにて。
30 . April
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22 . July

ネタストックに埋もれた中から発掘してきました。
驚きの3年前クオリティ…。紙一重でセルフ羞恥プレイですが勿体ないので載せてみます。
二人とも大学生で山伏さんは神龍寺の付属大(捏造)に進学して下宿、阿含はそれを追っかけて入学って感じです。前提がリリカルですみません。これ書いた時はまだナーガ戦が終わるか終わらないかだった気がするんだ…。
読んでみようという奇特な方はつづきから。




 何だろう、このお花畑。
 下宿に帰ってくるなり、山伏はそう思った。玄関を開けた途端、六畳一間の仮住まいにパステルピンク色の空気が立ちこめていれば、誰だってそう思わざるを得ないに違いない。
 部屋自体が変わったわけではない。一応片づいてはいるが、男子大学生らしくどこか雑然とした室内は相変わらずだ。
 原因は、その中にいる生き物だった。
 でっかい猫と子猫が、丸まって昼寝をしている。
 正確には、でっかい猫のような後輩と子猫が昼寝をしている。常々猫科の肉食獣っぽいと思っていたが、猫だとは思わなかった。
 そこまで考えて、山伏は思わずぱたぱたと手を振った。いや、そうでなく何で子猫が。常日頃から入り浸っている後輩はともかく、何故子猫が。
 まだ骨組みが頼りない白いいきものは、でっかい猫改め阿含の腹あたりに額をすりつけて眠っていた。夢でも見ているのか、時折薄い耳がぴくりと震える。一挙手一投足が可愛らしい、子猫の見本のような子猫である。
 そして阿含も、今日は珍しく熟睡モードのようだ。シャツ越しにも見て取れるしなやかな筋肉は、ゆっくりと上下して安眠を示していた。
 いかつい外見に似合わず、山伏は可愛いものが大好きだ。そして細かいことには拘らない。
 やがて、可愛いからいいんじゃないか、と簡潔この上ない結論をつけて、彼はやっと靴を脱いだ。28cmの軽量設計スニーカーが、軽い音で狭い三和土に落ちる。
 スポーツバッグを机の上に下ろし、唯一空いていた空間に腰を落ち着ける。二匹を起こさないよう、細心の注意を払って子猫の脇に座り込んだ。
 よく見ると、若干ささくれた畳がその毛並みにひっついている。こればかりは、掃除をしてもどうしようもない。勿論阿含のドレッドにも、藺草の欠片が付いていた。
 寝こけた後いつもこれで文句を言うくせに、彼は一向に畳の上に寝転がるのをやめない。実家が日本家屋だと言っていたので、畳の上が落ち着くのかもしれない。
 そうしてじっと見ているうちに、山伏は強烈な欲望に襲われ始めた。
 撫でたい。
 眺めて存分にきゅんきゅんするのも大変結構だが、せっかく間近にいるのだから撫でたい。その腹をぽにぽにしたり喉をごろごろしたりしたい。対可愛いもの好き最終兵器といっても過言でない存在・子猫が触れる位置にいるのに、触らなければ可愛いもの好きの名が廃る。そんな称号を名誉に思う輩がいるかどうかは別として。
 ともあれ、山伏はその白くて丸っこい物を撫でようと手を伸ばした。
「にぁ」
 が、その直前に子猫は素早く目を覚ましてしまった。瞬く間に警戒体制を取り、山伏の手から避難する。
「ぉ、い」
 思わず声が出た。
 惜しかったのもそうだが、一番の理由は子猫の逃げ込んだ場所に驚いたからだ。もそもそ、と阿含のシャツが動いているのが解る。子猫は、彼のシャツ(幸か不幸か、丈も幅もたっぷり余る輸入物だ)の裾から潜り込んで、籠城を決め込んでしまった。構図的に、阿含は母猫のように見える。これで起きないのはいっそ驚異だ。
 と、流石にくすぐったかったのか阿含が身じろぎした。もそ、と中の子猫も合わせて据わりのいい位置を探している。
「くふ、ん」
 一層丸まってそんな息をついた後、彼はまた深い眠りに落ちた。くすぐったさにか、薄い唇はかすかに綻んでいる。母猫は近来希にみる幸せそうな顔である。
 双子の兄より強面な面構えだと思われがちな阿含だが、実際目元の線や眉の形から言えば、彼の方が柔和な顔立ちをしている。自分でもそれを悟っているから、表情でカバー出来ない分をサングラスで補っているのだ。無意識にその補助効果を感じ取っている山伏は、だから素顔の彼の方が好きだ。もっとも、遮光レンズを隔てない瞳の色を知ったのは、大学に入ってからのことだったけども。
 サングラス、なくてもいいのになあ。
 ひとり頷いた山伏を窺うように、襟から子猫が顔を覗かせた。すべらかな喉と鎖骨に柔らかい毛並みがすれて、また阿含が息を漏らす。
「くふ」
 首をすくめた猫二匹にとどめを刺され、とうとう山伏は破顔した。思わず阿含の頭を撫でてしまう。
「可愛いなあ、お前ら」
その一言で起きた彼が、狸寝入りで赤面するまではあと数秒。
 
 山伏さん家の大きな猫は、今日も飼い主にめろめろです。

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