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萌えた時に萌えたものを書いたり叫んだりする妄想処。生存確認はついったにて。
30 . April
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09 . December
前の頂き物記事のタイトルもひらがなに!だったんですが、別にシリーズにしようとしているわけではありません。あ、小説のタイトルでもないですよ!
気管支病みの落書きまんがを晒したところ、俺の嫁兼同志のHUGHからえらいものが送られてきたので、鼻から激しく出血しながら拝み倒して載せさせてもらいました。嘘みたいだろ…これで文書くの初めてらしいんだぜ…。
ちょっとだけバイオレンスな描写があるのでご注意下さい。大丈夫な方はどうぞ続きから!
ちなみに小説なので、余韻を台無しにしないように作品の後ろの追記は自重しました。





 ある深夜、ウソップはなにかの胸騒ぎを感じ、はたり、と目を覚ました。とくに何かがおかしいこともないのに再び寝付くことがなかなか出来ず、仕方もないので、大して尿意を感じたわけでもないが用でも足そうと起き上がる。暗く湿った空気に満ちた船内は、コツコツと響く足音も併せ、どことなく胸がつまるような思いを浮かび上がらせた。ゆらゆらと揺れる明かりの燭台をしっかりと握りしめながら歩いていくと、どこからか、かすかに鈍い音が聞こえてきた。
 思わず足がすくみ、息を詰まらせると、鈍い音は船の奥から、不規則にだが、確かに継続して響いてくるようだ。
 普段聞きなれない物音などから、稀に重大な船の故障が見つかることがある。その不可解な物音に酷く腰が引けつつも、気付いてしまったからには船の安全の為にも音の正体を確かめねばならぬだろう。男ウソップは、拳を胸にあて心を決めると、そろそろと廊下を進み、自分の心臓の音にすべてが飲み込まれそうになりながらも音を辿っていった。
 音源に少しずつ近づいていくと、どうも階下の物置の方から音が聞こえるらしいことが分かってきた。――そう、物置だ。

 話は少々さかのぼることになるが、現在この船、サウザンドサニー号には、この麦わら海賊団の船長であるルフィが義兄のエースを世界政府による公開処刑から救出するという無茶をした際に、大変重要な役割を果たしてくれた(もちろん、自己都合の上での、まったくの付属的な行動だったに違いはないのだが)というクロコダイルを、何を思ってかこの船に一時的なクルーとして受け入れている状態なのだ。
 もちろん他のクルー達にとっても未だ信用がおけるはずもなく、クルー達とは離れた個室、とはいえただ船大工フランキーが少々居心地の良いスペースを築いただけの、要は物置の隅に、クロコダイルは閉じこもっている。

 そのクロコダイルが、いまもそこに居るはずの、物置。不規則に続く鈍い音は、その物置から発されていることが分かったのだ。
 しかし、自らを海の戦士と名乗るウソップは、果敢にも己を奮い立たせ、せめてもう少し近くまでいって様子を伺うべきであろうと、おそるおそる物置へと連なる廊下を曲がった。瞬間、どうもその不可解な音はひどく湿った咳の音が狭く長い廊下に反響し、鈍い音となって聞こえていたらしいことがわかった。
――クロコダイルは何かの病持ちなのか?
 それとも、何かの疫病だったらどうする……。
 だがその病が何であれ、その湿った咳の音、気管支が爛れきったような呼吸音には、たとえそれが信用のおけないただの居候の発するものであろうとも、心ある人間ならば居てもたってもいられなくなるのは当然であろう。それでも相手は、元とはいえ、あの七武海の一角を担っていたほどの恐ろしい人物である。無闇に近づけるほど、度胸が座ってなどいない。
 ウソップは、静かに、しかし大慌てで部屋へと駆け戻ると、船長であり実質上この船一番の実力者であるルフィを必死で揺り起こした。
「んぁ……なあんだよこんな夜中に……今日の見張りはゾロだろぉ……」
「んなこと言ってる場合じゃねんだよ!! おい、おまえ、今すぐクロコダイルの様子見てこい! 絶対あいつなんかの病気だぞ!!」
寝ぼけ眼で不満を漏らす頼りない姿に、思わずウソップは涙目になりながら、ルフィに訴える。
「……?」
「とりあえず、様子を見てきてくれ! それで、なんとかして説得してチョッパーに診せてやってくれ……相当苦しそうなんだ、物置の近くに行きゃわかる! 俺は中に入る勇気なんざねェが、おまえならなんとかなるだろ!! 頼む」
「……!! わかった。とりあえずは様子見てくりゃいいんだな。ありがとう、行ってくるよ」
寝乱れた寝巻もそのままに、裸足で駆けていく後ろ姿を眺め、ウソップは己の震える両手に視線を落とした。
「……お人よしだな」
「!!」
いつのまに起きていたのか、横になった状態でこちらを見るサンジの突然の声に、さらに心臓が縮みあがった。
「……船長が行ったんだ、あとはまかせとけ。なんとかするだろ。……ほら、こっちへ来い。明日も早いんだから、もうひと眠りしとけ」
 その様子に苦笑しつつも、怯えきったウソップを安心させるように、己の寝台の隣を軽くたたく。
「べ……べべべ別に餓鬼じゃねェんだから一人で寝れるわ!!!」
 いいながらも、結局自分の枕と毛布を持ち込み、サンジの隣へと移動した。
 未だかすかに体を震わすウソップの様子に思わず口元を緩め、そんなサンジの様子に腹をたてながらもやっと心が落ち着いてきたウソップは、もうひと眠りするべく疲れ切った瞼を閉じた。
 ……やっぱりクロコダイルなんか船に乗せなきゃ良かったんだ……、と強く思いながら。


 慌てて物置の前まで駆けてきた船長ルフィは、中から聞こえる、まさにウソップの言う『なんかの病気』としか思えないような咳の音に、思わず一瞬躊躇してしまう。
「おい、ワニ。入るぞ」
 一応軽くノックをするが、返事を待たずに中へ入る。窓など一切ない物置の奥、重なり固定された木箱の影から、薄く明かりが零れていた。
「……おい。生きてるか」
 ずかずかと足を踏み入れ(自分の船の中なのだから、足を踏み入れるというのもおかしな話だが)、壁に背を預けるクロコダイルの前にしゃがみこむ。部屋に入った途端、外にいたときとは段違いのはっきりとした痰の絡む咳とひゅうひゅうという呼吸音に、ルフィは顔をしかめる。
「……ゲホッ……なんの、用だ……」
 気だるげに壁に寄りかかりながら、顔をこちらに向けるクロコダイルの顔は、昼間見るときよりも随分とやつれ、うっすら隈に縁取られた目はどこか虚ろに濡れていた。
「……ウソップが、その咳を聞いて心配していた。おまえ、苦しい音がしてる」
「ハッ……それは、すまねェことを、……したなッ」
 弱弱しく言葉を紡ぐクロコダイルのこめかみから、一筋の汗が流れおちる。ルフィを見上げる姿勢すら辛そうに、腕で体を支え肩で息を吸うクロコダイルの姿に、思わず手を出して姿勢を整えてやる。
「船医がいる。優秀なやつだ。呼んでくるから、少し待ってろ」
顔をのぞき込み、クロコダイルの額に手を当て軽く熱を測ると、汗で湿った表面はひんやりと冷たく、しかしその奥はひどい熱を持っていた。弱弱しくその手を振り払い、思わず思い切り息を吸い「ふざけるな」とでも言おうとしたのだろう。その瞬間、激しく咳き込み反射的に体を丸めた。ルフィは少々困った顔をして背を撫で、その咳に合わせ軽く叩いてやる。
「……ここは、おれの船だ。おれの言うことは聞いてもらう。……船医におまえを診せる。なにかの疫病でも困るからな」
そう言って立ち上がるルフィの服に、クロコダイルの鉤がひっかかった。
「ちげェ……これ、は持病、だ……疫病、な、んかじゃ、ねェ……朝にゃ治、まる……」
息も切れ切れに言葉を紡ぎ、服を引っ張るが、ルフィは構わず振り切って扉へ向かった。クロコダイルはそれにつられてバランスを崩し、床に倒れこんでしまう。そのまま苦しそうに腕をつき、先程よりも重たい咳の止まらなくなったクロコダイルを放っておくわけにもいかず、仕方なくルフィは自分より随分と大きな体に腕をまわし、とりあえず仰向けに、近くの木箱に背を預けて座らせた。
 その隙に、クロコダイルの右手にがっちりと腕を掴まれ、下手に動けない状況が出来上がってしまった。
「誰か呼ぶ、なら……今すぐ、おまえ、を、……ゲホッ……木乃伊に、してやるッ……!!!」
下からはっきりと睨みつけられ、渇きの右手で拘束されては強引に事を運ぶことすら出来ない。
「……わかった、……とりあえず誰も呼ばねェから、手を放せよ」
途端、するすると拘束は解け、だらりと腕が投げ出される。
 荒い呼吸に、激しく咳き込み丸める背。
 呼吸が苦しいのか、時折そらす首元には小さな傷が治った跡が生々しく残っていた。
 肩で息をする姿に、弱弱しく床を掻く指先。
 左手の先に禍々しく光る金の鉤は、重たそうに床に置かれていた。
 燭台の踊る灯りに照らされたうっすらと汗の浮かぶ青白い肌。
 薄く開かれた乾いた唇と、少しきつめに閉じられた瞼が痙攣する。
 ゼェゼェと耳障りな音を鳴らし続ける胸を反らし、耳のピアスがきらり、と光った瞬間。何を思ってか、ルフィはクロコダイルを床に押し倒し、その首を緩やかに絞めつけていた。
 はじめはただ添えるだけだった両手に、少しずつ力が込められる。
「……おい、……いつもみてェに、砂んなって逃げねェのか」
「ゴフッ…ゼェ………ハッ…い、まなら……おめェ、の仲間、の、仇……が、討て、んじゃねェ……かッ」
ひきつった笑みに、どんどん青白くなる唇が囁くように言葉を紡ぐ。
「…………。」
何も答えず、爛々と輝く瞳をただ向けて、緩やかに首を絞める力を強めていく。
咳き込むことすらできず、ヒッヒッと微かに息を吸い込む呼吸音だけがあたりに響いた。
「おれは……、おまえのことを許したわけじゃねェ……」
 突然、首を絞める両手に思い切り力を込め、頭を持ち上げ床に叩きつける。
「…ぅグッ……ッ……………」
クロコダイルは目を見開き、口をぱくぱくとしながら目の縁から一滴の涙を床に落とした。
「……だから……死ぬなよ。死ぬんじゃねェ」
絞めつける指の先が白くなるほど、きつく強く絞めつけ、クロコダイルの顔は既に鬱血して赤黒に近い色に変化していた。
「おまえが死んだら、おれはおまえを憎めないだろ」
「だから、なあ、死ぬな、、死ぬな死ぬな死ぬな……」
輝いた瞳に涙が浮かび、クロコダイルの鼻筋へ涙が滴り落ちる。ルフィの赤々とした唇からは、まるで永遠の愛を囁くようにひとつの願いが流れでていく。
「……勝手に、死ぬんじゃねえよ……」
 苦しそうに顔をゆがめ、全身を引き攣らせ藻掻いていたクロコダイルは、ついにふっ…とすべての力が緩んで崩れ落ちた。
 その瞬間、ハッと我に返り、首を絞めていた手を解放しクロコダイルから跳んで離れる。反対の壁に張り付いて目を見開き、荒い呼吸でクロコダイルを見つめた。少しの間を持って小さく呻き、激しく咳き込み始めたクロコダイルに、ルフィはすとん、と座り込み、己の両手をおそるおそる開いて眺めた。
 ドッと溢れる汗に、カタカタと音をたてて震える体。再度立ち上がることすら出来ずに何度か転ぶ。
 どうしようもなくなって蹲り、ただひたすらカタカタと震える全身を支えることに必死で、見開いた瞳からはぽたぽたと涙が零れ落ちるのも気にする余裕は無かった。

「……ハッ……殺そ、うとして、ん、のは……てめェだろ、…が……」
 解放され、呼吸を少し回復したクロコダイルは、未だ若干赤黒い顔に、涙の溢れる真っ赤に充血した瞳を開き薄く笑った。ルフィはビクッと体を揺らし、涙を拭うことも言葉を紡ぐことも上手く出来ず、カタカタと歯を鳴らした。
「ど、した……殺、す覚悟、くらい、ある……だろ……海賊だろ、がッ」
 己の震える手を見つめ、ただ涙を流す餓鬼相手にクロコダイルは笑いが止まらず、息もろくに吸えない中、浅い声をたてて笑った。ヒゥヒゥと気管支を鳴らして苦しげに胸を反らしながら、心底面白いものを見たかのように、クツクツと嘲う。
「……おい……朝ま、で……そこ、に、いろ…よ……おれは、そう簡単にゃ、死な、ね、んだよ……クソガキがッ……!!!」
 軽く頷くことしか出来ず、クロコダイルとは反対の壁にぴったり張り付いて小さく丸まって震えるルフィの意識は、いつしか極度の精神疲労からか浅い靄へと吸い込まれていった。


「……チッ……起きろ、クソガキ」
 朝、なんとか気管支の回復したクロコダイルに蹴り起こされ、寝ぼけた頭に自身の深夜の行動が蘇る。ルフィは跳ね起き、そろそろとクロコダイルを見上げた。
「……!!!」
未だうっすらと顔色も悪く、首元には己の小さな指の食い込んだ痕がくっきりと赤黒く残っていた。再び流れ始める涙を止める術を知らず、未だ憎しみを覚える筈のクロコダイルに思わず縋りつく。
 そのままルフィを受け止めたクロコダイルは、己の乱れた髪をさっと整え、ルフィの首にそっと右手を添える。
「……海賊になった時点で、手前で覚悟を決めたんだろうが」
クロコダイルの静かな呟きに、微かに頷く。
「自由を求めて、全ての責任を己に課して、無情な命のやりとりの渦中に身を投げ出したんだろう」
ルフィの首からゆるゆると手を滑らせ、その大きな手で頬を包む。
「だったら、……憎む人間の命ひとつでぐだぐだぐだぐだ悩んでんじゃねェ!!!」
「手前の行動には、手前の責任がいつだってついてまわる」
「それを手前は、己の分のみに飽き足らず、仲間の命の分まで背負って誇り<旗>を掲げたんだ。それは、ただの遊びじゃねェ」
「それをわかって猶、手前は……自由を、選んだんだろうが!!!」
頬を思い切り掴み、無理矢理上を向かせると、そのまま噛み付くようなキスをした。
「?! ……んッ…………ふぅっ…………ッ」
 必死で藻掻いて逃れようとするが、強く押え込まれ逃げられない。頬をつかまれ無理矢理開かれた口から、生ぬるく湿った分厚い舌が押し込められる。口内を好き勝手に蹂躙する舌に、知らず反応を返す身体がたいそう気持ち悪く、いっそ思い切り噛み砕いてやろうとした瞬間、スッと唇を開放された。
「……手前は、まだまだただの餓鬼なんだ。なんの覚悟も、なんの制御も出来ちゃいない」
「……ッ!!」
顔を逸らそうとしても、頬を掴まれていてどうしようもない。
「そのままのクソガキが、才能だけで新世界に通用すると思うなよ」
ガッと突然投げられ、顔から床に叩き付けられた。
「手前のクルーを大切に思うなら、手前自身が覚悟決めねェことには一人残らず死なれるぞ!!!!!」
ビリビリと、一瞬の凄まじい覇気に飲み込まれる。
「てめェがこの先、まだ海賊旗掲げて新世界を横断する気があるのなら」
「海賊王なんぞ安っぽい夢を追い求めて、またこの先に仲間の運命をも巻き込んでいく勇気があるのなら」
「今、すぐに覚悟を決めろ!!」
「仲間を、…失いたくなかったらな」
まるで死闘の最中のような鋭い眼光を携え、絞り出すように言葉を紡ぐと、酷く不快な表情を隠さぬままにルフィの腹を蹴り上げた。
受け身をとって立ち上がったルフィは、一瞬クロコダイルを思い切り睨み付け口を開いたが、……拳を握り締めたままに俯いた。
 血が出る程に唇を噛み締め肩を震わせながら、クロコダイルに深く一礼をすると、扉を叩き開け勢いよく部屋を飛び出していった。


「……船長、か……。畜生ッ……」
遺されたのは、仲間を失くした独りの船長ただ一人。
 


fin…

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