後藤、と呼ばれて振り向くと襟首を引っ掴まれた。横暴に抗議するより早く、ラージサイズのスポーツタオルと体温計を押しつけられた。濡れたピッチの上で勝利を誇っていた監督の顔はそこになく、俺は瞬間的に自分のすべきことを了解し、走る。冷たく強張った彼の感触を思い出しながら。
(セクピスパロ・体温調節できない鰐のドリさんと秋田犬後藤さん)
鍵をかけた。バーを起こす余裕はなかった。もつれこむ一瞬の間も惜しく、肺を圧迫する勢いで身体を締めつける。足りない。足りない。唇を食って舌をからめて膝をぶつけあって、必死で互いに近付こうとしている。これ以上ないほど近くにいるのに何が欲しいのか。そんなものは決まっていた。
(がっつくドリゴト)
「終わりにしよう、緑川」
舌の上に留まっていた言葉をどうにか押し出す。顔を見ることは出来ず、視線は喉仏から這い上がろうとして叶わない。「いいですよ」と間を置かず返事があって、瞬く間に指が冷える。
「じゃあ改めて、俺と付き合ってくれませんか?」
すこし笑った唇が、額に降った。
(色々暴走して終わらせようとする後藤さんと終わらせないドリさん)
「大人しくしててください熱下げるにはこれが一番なんですよ」
「やめろ絶対嫌だこの歳で人に座薬入れられるとか絶対嫌だ!」
「早く仕事復帰したいならこの際プライドとか捨ててくださいよ!」
「お前に入れられるくらいなら自分で入れる!」
「……」
「……」
「見せ」「ない」
(風邪っぴきGM)
猛毒飲んだ直後に気付いたみたいな顔して、そんな顔するタイミングなんてとっくに逃してやがるのに。でかい図体していい歳して俺の我儘散々聞いて随分長いこと俺の傍にいたくせに、そんなこともわかんねえの。お前がうちの1番に惚れてたって、俺がお前を嫌うわけねえだろ。
(ドリゴト前提タツ+ゴト)
叶っているのに届いているのに手を伸ばせば触れるのに、どうしてあなたは目を閉じて耳を塞ぐんですか。手に入らないと思いこみたがる臆病さを見守るのもいい加減限界で、俺はどうしてもあなたが欲しい。瞼を開けて指をひらいて顔を上げてさあ、俺をあなたのものにすればいい。
(臆病GM)
「なードリ、何したい?」
「何の話ですか」
「みんな楽しいミニゲームのお話」
「借り物競走とかどうです」
「じゃあスーツとかネクタイとかタイピンとか後藤とか入れとくわ」
「恋人って書いといてもらえませんか」
「緑川くんに非常にイラッと来たので借り物競走は却下します」
(ドリゴト前提ドリ+タツ)
すきだ、と呂律の回らない舌で息に溶けた声がこぼれる。俺もですよ、と答える声もおぼつかない。ゆるやかに回っている視界の真ん中にはシーツに倒れたあなたがいて、俺はああもう一回言ってもらって録音を、と携帯を探る。だってきっと、明日の朝にはなかったことになっちまう声だ。
(泥酔ドリゴト)

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