ああ、誘っているのだ、と思った。
前から随分と好意的なフェロモンを漂わせていることには気付いていたが、ここまであからさまならば、もう疑いようもない。どうしてまだ服を着ているのか、疑問すら抱くような目を、彼はしていた。頭の芯がじんわりと痺れ、炎を戴いた蝋のようにどろりと溶けゆく錯覚に陥る。
「違う、違うんだ、マクレガー、俺は」
聞かない幼子のようにかぶりを振り、シャツを掴んでくる。欲情した顔を向けることがおそろしいのだろう、否定句を口にしていることは理解できたが、その理由はマクレガーには解らなかった。何が違うと言うのだ。縋る指先をあかく灯して、伏せたまなじりに色を孕ませて、日本人は誠実だと聞いたけれども、酷い嘘つきだ。
『何も違わないだろう』
聴き取れるよう、ことさらゆっくりとマクレガーは耳元に囁く。膝が抜け、崩れる寸前の身体を済んでのところで抱き留めて、脚の間に腿で割って入る。擦りつけられる格好になったそこに、言い逃れようのない硬さと熱がある。
「ぁ! ぁあっ……っ」
下から持ち上げるように腿を押しつけると、とらまえた腰がしなって震えた。背骨の終わりをなぞれば、今にも尾が出てしまいそうな有り様だ。
『君は私に抱かれたいんだろう、戸倉』
上気した肌から滲む、雌の匂いに肺を満たしながら、マクレガーは戸倉の耳に歯を立てた。抵抗はなく、シャツを握りしめた手は一層固く拳を作る。
処女を犯すのはこんな気分かと、愚にもつかない考えが頭を掠めて、消えた。