そうか、とうとうあいつは完全な兵器になったか。
寄ってくる有象無象を巻き上げながら、大した感慨もなく思った。高らかに、歌うように響く声が披露する、暴君と言われた男の末路を耳が拾っていた。あの無骨で寡黙な能力者は奴のお気に入りだったはずだが、失ったところでさして痛痒もない程度の相手だったのだろう。
とは、奴の顔を見るまでの考えだ。
「どうだ、俺と手を組まねェか?」
いつもの悪趣味なサングラスに、傲然と浮かべた笑み。
それでてめェの心底を隠したつもりかよ、クソガキが。
「――――素直に”教えてください”と言えねぇのか?」
新しい葉巻に火をつけて唇を歪める。余裕の表情ってのはこうやって作んだ。よく見ておけ。
今まで見たどれよりも出来の悪いポーカーフェイスにひびが入る。
大切なものを失くすのは初めてか。馬鹿な奴だ、そんなのは必ずいつか壊れるものだってのに、どうして作る?
「”バーソロミュー・くまの記憶と人格がバックアップされている研究所へはどうやって侵入すればいい?”」
どうした、保ってみせろよ。
底意地の悪い笑顔が剥がれたら、ただでさえ透けてるてめェの思惑が筒抜けだぜ?
「…………答えろよ、イエスか、それともノーか」
奴の指先が引きつるように動いて、鉤爪が吊り上げられる。癇癪を起こしたガキみたいに沸点の下がった有様を、鼻で笑いながら砂に変じる。戦場の空気に乗って霧散しながら移動し、奴の隣に立った。
「いいだろう」
かつてあの国で英雄を演じていた時と同じ鷹揚さで、諾と返す。濃い色のサングラスの向こうで、視線の色が変わる。
同情でも腐れ縁でも、ましてや友情などではない。単純な利害の一致だ。俺は戦力を、奴は情報を。何かを得るには対価を与えるのが当然、それが自分にとって易いものなら受けない手はない。
「――――イエスだ、ミスタ・ドフラミンゴ」
世の中は全て、ギブアンドテイクで回る。
役に立つなら教えてやろう、てめェが泣きながら探してる男が、どこに閉じ込められてるのかを。
あまりにもドフラが切なくてやらかしました。
七武海で多分くまの次に優等生だった社長は、現時点で一番海軍本部に近かったんじゃないかと思いまして。
別に社長はくまのバックアップが研究所にあると知っているわけではないのですが、元革命軍側の(と思わしき)人間の記憶を何のバックアップも取らずに消去するわけなんてないと判断しての発言です。というか私がそう考えているだけなんですが!
だって紐解いたら政府に有利な情報とかもあるかもしれないじゃない!だったら不用意にデリートなんてするわけないじゃない!完全改造されたのが数日前なら、まだきっと解析とかも追いつかないから残ってるよ!人格も記憶の一種じゃないかと思うのでいっしょに残ってるよ!
もの凄い詭弁で理論武装してすみません。いつのまにこんなにくまが愛しくなったんだろう。

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