【コブ鰐】
王としては弱すぎるが、賢君として評価してはいたのだ。それが今、クロコダイルの中で地に落ちた。「私は君を許したい」男の言葉に既視感と激しい憎悪を感じながら、錠で戒められた身を捩った。それでもたやすく捕えられたまなじりに降る、親愛のくちづけ。何よりの屈辱だ、と歯噛みした。
【冥王鰐】
昔から、手に入らないものを欲しがる子だった。焦がれて憧れて、必死に腕を伸ばす姿を、哀れでいとおしいと思った。私にしておきなさい、と言ったらあんたもおれの物にならねェくせに、と攻撃的に唇を歪める。哀れでいとおしくて賢くて、どうにも切ないその唇に、苦笑して同じものを重ねた。
【ドフ鰐】
乾いた地表のように、傷つきひび割れた身体を、長い指が撫でる。互いを隔てる檻ごと抱きしめ、ほつれた髪にくちづける。感傷に浸る齢でも関係でもねェだろう。薄く笑う唇に誘われるように、相手も口角を吊り上げた。
「ならこのままファックするか?」
耳障りな揶揄も、これで聞き納めだ。
【ドフ鰐】
起きろよ、と肌を伝って声が響く。ドフラミンゴはうつぶせの背を何度も啄んでは、主人の覚醒を促した。もう真夜中を過ぎている。そろそろ彼らの時計では寝坊になる。月の引力にざわめく血を、吸ってもらわねば。食っちまうぞ、と洒落にならない台詞を吐いて、尖りかけた牙を甘く立てた。
(吸血鬼主人×人狼従者パラレル)
【ドフディス】
鼻の奥が痛むほどあまい香水の匂いを染みつかせて、上司が迫ってくる。上から身を屈めて覗き込んでくる。強くけぶる香りとシンボルそのままの笑みに不快感を隠さず眉を寄せると、上司は更に喉を鳴らした。「妬いたかね、ディスコ君」自身過剰ですよ、という言葉は舌に押し戻された。
【鰐ドレ】
「海軍で昇り詰めるには、君は潔癖すぎた」
愉快そうに、葉巻を咥えた男が見下ろしてくる。上り詰めるつもりなどなかった。ただ正義の在り処が知りたかった。何も言えず見つめ返していると、ゆったりと笑った彼は葉巻を指に預けて首筋に囁きを落とした。
「ようこそこちら側へ、元少将殿」