今回大分ぎりぎりでしたが、どうにかこんな表紙のドリゴト本が出ます。
原作世界観の話が2本、学パロが1本の短編集です。
やることやってるので18歳未満のお嬢様はごめんなさい。
サンプルは続きからどうぞ。
じゃあもっと年齢を下げて十代の女の子だったとしたらどうだ。それはまずい。流石に色々まずい。全力で止める。これだ。
「後藤さん、やめてください。俺が誰だか解ってますか」
遠回りに遠回りを重ね、やっと冷凍マグロから人に戻った緑川は、とりあえず跳ね起きて股間から後藤の頭を剥がした。しっかり勃ってしまっている息子がずるりとその口から抜けて、彼の頬を擦るのを直視してしまい、瞬間緑川は何かにめげそうになる。
「……やめない」
酔った後藤は平生と変わらず意固地だった。ああこの人そういうところあるよなあ、と納得した時には、臨戦態勢のそれは再び彼に咥えられていた。全力で止めるんじゃなかったのか、という叱咤が頭の中に響く。
「いや、ちょっ、やめないじゃなくて、ていうか後藤さん、」
何でやたらと上手いんですか。
問題はそこではないことに気付き、緑川は口を噤んだ。遅ればせながら、自分は相当混乱しているらしい。冷静になってどこかに眠っている危機感を引きずり出してこないことには、自分の貞操が途轍もなく危うい。
「俺はっ、男に抱かれる趣味とか、ないですからっ」
喉奥でぐっと絞められて、思わず息が詰まる。押し退けようと再度手を伸ばしかけたところで、後藤が顔を上げた。
「……抱かないよ」
焦点は定かではないが、さも心外だと言わんばかりの顔だった。右往左往する心の中の自分が安堵したのも束の間、後藤はぼそりと言葉を接ぐ。
「俺が、乗るから」
えっ。
処理できない情報を上乗せされ、脳細胞が悲鳴を上げた。どういう、意味だ。乗る。誰が。後藤さんが。俺に。何で。
「俺、ネコだから。緑川は、寝ててくれればいいから、そのまま」
思いついた順番に喋っているような、断片的な説明だった。飲み込んだ氷を胃袋で溶かすように、緑川は耳から入った言語を必死で咀嚼した。結果、掘るのは自分の方だということだけはどうにか理解した。
「……いや! だからそういう問題じゃなくて、俺は別にホモでもバイでも」
「知ってる」
か、と首筋から後藤の膚が染まる。欲情していても緑川の声は穏やかなままで、それがことさらに彼の羞恥を煽る。とうに露見していても、倒錯的な性癖に触れられると、後藤は身動きできなくなる。その瞬間、彼はいつでも針で留められた標本の昆虫を連想する。
「違う……っ」
吐いた言葉の白々しさに、いっそう濃い朱が昇る。違う、と口にした否定こそが誤っている。せめて建前だけでも正常でありたいと願うのが悪足掻きであることぐらい、自分でも解っている。緑川にも、知れていないはずはない。真っ向から自分の被虐癖と向き合えない後藤の代わりに、本音を引きずり出すのは、彼の仕事だった。そうさせるのは義務や使命感ではなく、単なる欲求だ。
俺はいじめっ子ですから、相性いいじゃないですか。
ひた隠しにしてきた後藤の嗜好を、いともたやすく嗅ぎ分けて、さらりと緑川は言った。肉体的な苦痛には興奮しないことを急いで言い募ると、おかしそうに喉を鳴らされた。言葉の文ですよ。思わず撫で下ろした胸にとんと指先が当たり、次の瞬間息を呑んだ。
『でも、苛められるの好きでしょう?』
心得ている声だった。
その一言だけで昂ぶった後藤を、緑川は優しく組み敷いて犯した。抱くのではなく、同意を得た上で彼を我がものとして支配した。ひとつひとつ、指先に記憶させるように肌を探り、時間をかけて肉体的な快感と、精神的なそれとを炙り出した。陶然と抱いた、長々とけだものに喰われているようだ、という感覚はあながち間違っていない。
「なら、優しくしましょうか?」
薄く染まった後藤の項を、痕を残さぬ程度に啄んで緑川が訊く。これで彼が沈黙に逃げることを解っていて、尋ねる。首を縦に振るのは本意でなく、しかし欲するところを口にするには自制が邪魔をする。それを、緑川は踏み潰しにかかる。
「ちゃんと教えてください。後藤さんの嫌なことはしたくないんです」
下手に出るふりで、その実お預けを食わせる。とらまえた手に指をからめ、指の股を撫でて手首の内側をくすぐると後藤の肩がちいさく揺れた。もう片方の手は、穏やかにシャツ一枚隔てた胸の先を行き来している。後ろからでは見えないが、おそらくもう彼の股間はスラックスの前立てを押し上げているだろう。
こんな感じの、大体後藤さんがあんあん言ってるか赤面してる本です。

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