息ができないようでしたら、僭越ながらお手伝いさせて頂きます。
常は糊のきいた襟の内側に行儀良く納まっているそれが、じかに首へと巻きつき、しなやかに絡む。頭が転げるかと思うほどの強さで後方へ持って行かれ、同時に視界がブラックアウトした。酸素の供給が絶たれたと事態を把握するより速く、シーツを掻いていた指が己の喉に爪を立てる。抗うさまを捉えて、拘束は速やかに弛んだ。
横隔膜を波打たせ、何度も咳き込むその背を優しく撫でて後藤が笑う。笑いながら、再びネクタイの端を指で引く。窒息によって必然的に収縮する粘膜が、体温に溶けたゼリーのせいでぐちゃりと鳴る。快い刺激を受ければ、突き上げたくなる。だから後藤はそうした。
「ぐ、ぅ! ……っ!」
喘ぎというより、奥歯で磨り潰した呻きの残骸だった。内側から内臓を擦られるたび、圧迫感が喉までせり上がっては溢れだしそうになる。逃れようと前にいざる膝は許されず、また気道が塞がれる。そのまま下腹の裏側を削られるように打たれて、吠える獣の曲線で背がしなった。
「ああ、こういう抱かれ方もお好きなんですね。早く試して差し上げればよかった」
慢性的になりつつある酸素の欠乏に、涙どころか唾液まで拭うこともできず、まるめた体に圧しかかる重みがある。ぐずりと粘膜同士を繋げきって、それだけでは飽き足らず前にも指をからめてくる。
「満足されるまで、何度でもお付き合いさせて頂きますよ。浅倉副社長」
柔和な声で語りかけてくるこの男は誰だ。
数十分前まで共にいた、若輩のジェネラルマネージャーはすでにどこにもいなかった。

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